東京慈恵医科大学 総合医科研究センター遺伝子治療研究部
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■遺伝子治療研究部門

研究プロジェクト

 当研究部では主に難治性疾患の遺伝子治療を含む様々な治療療法の開発を行っている。対象疾患は遺伝性神経疾患(特にリソゾーム蓄積症)、糖尿病、慢性腎疾患などである。 

1) 遺伝性疾患

 主な研究対象を先天代謝異常症に分類されるライソゾーム病としている。ライソゾーム病とは細胞内小器官であるライソゾームに存在する水解酵素の機能不全でその基質が細胞内蓄積することにより様々な臓器障害を来す疾患であり、現在40種以上知られている。そのなかでファブリー病、ゴーシェ病、ムコ多糖症の一部、ポンぺ病に酵素補充療法が開発され保険収載されているが、中枢神経系や心臓弁膜への効果など課題も多い。また造血幹細胞移植も非常に有効な根治手段であり中枢系への長期効果なども期待できるが、やはり重篤な副作用やドナー確保などの課題がある。 これらを克服する治療法の開発を主に行っている。
  1. 1. 遺伝子治療の臨床応用に向け基礎研究を重ねている。現行ではレンチウイルス・アデノ随伴ウイルス(AAV)といったウイルスベクターを用いた方法が遺伝子導入効率の点で臨床応用に最も近く、海外で有効とする報告も相次いでいる。 我々もムコ多糖症U型・VII型やポンぺ病、ファブリー病、クラッベ病などで基礎研究を蓄積しつつ臨床試験・治験の方向性を探っている。更に遺伝子治療研究の大きな流れとしてベクターによる方法とは別に遺伝子そのものを改変させるという遺伝子編集技術も注目されつつあり、我々も研究を開始している。上記に関して、近々に臨床研究を行うべく努力を重ねている。

  2. 2. 分子シャペロン誘導剤、プロテアソーム阻害剤などの従来の酵素補充療法を補完する低分子治療薬開発に取り組んでいる。

  3. 3. 酵素補充療法の問題点に酵素製剤に対する免疫応答がある。免疫寛容導入法の開発を行っている

  4. 4. 酵素製剤は非常に高価であるため、それを解決するため安価で安全な酵素製剤を植物細胞で作成し、前臨床試験を行っている。

2)悪性腫瘍に対する遺伝子治療

 主な研究対象を難治性の癌に対して以下の研究を行っている。
  1. 1. 悪性腫瘍の増殖、浸潤、転移、または抗癌剤への耐性において重要な役割を果たす転写因子nuclear factor-κB(NF-κB)の活性化を抑制するNF-κB阻害剤を用いた、消化器悪性腫瘍の新規治療法の開発
    膵炎・DICの治療で広く使われているプロテアーゼインヒビターであるメシル酸ナファモスタットや、免疫調節薬として多発性骨髄腫に使用されるポマリドマイドが、NF-κB阻害剤として消化器悪性腫瘍に対する抗癌剤の抗腫瘍効果を増強するかを検討している。

  2. 2. 肝虚血再灌流傷害におけるメカニズムの解明と新規予防法の開発
    主に実験動物を用いて肝虚血再灌流傷害におけるマイトファジーに関する機構に焦点を当てている。

  3. 3. 消化器悪性腫瘍に対する新規遺伝子治療法の開発
    p53のリン酸化によるアポトーシス誘導を引き起こすDYRK2をターゲットにして、DYRK2強制発現組み換えアデノウィルスベクターを用いて消化器悪性腫瘍に対する遺伝子治療の有効性を検討している。

  4. 4. 遺伝子治療技術を用いた癌性疼痛のメカニズムの解明と治療法の開発 主に実験動物を用いて癌性疼痛による後根神経節における痛み伝達メカニズムの解明することにある。癌性疼痛メカニズムは未解明な部分も多いため、その経路を明らかにすることにより新たな痛み緩和治療の標的となる可能性がある。明らかにした痛み伝達経路に対する遺伝子治療介入によって癌性疼痛の緩和を目指している。




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